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長野地方裁判所 平成2年(行ウ)15号 判決

長野県南佐久郡南牧村野辺山七九番地一三

原告

甘利愛子

右訴訟代理人弁護士

岩下智和

滝澤修一

長野県佐久市大字岩村田字内西浦一二〇一番地の二

被告

佐久税務署長 神田学

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号

被告

国税不服審判所長 小田泰機

被告両名指定代理人

山岡千秋

曲渕公一

清水俊一

被告佐久税務署長指定代理人

熊谷悦朗

江口育夫

須藤哲右

被告国税不服審判所長指定代理人

川口克巳

唐木孝

鈴木孝

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告佐久税務署長(以下「被告税務署長」という。)が平成元年三月一〇日付けでした次の処分をいずれも取り消す。

1  原告の昭和六〇年分の所得税の更正及び過少申告加算税賦課決定

2  原告の昭和六二年分の所得税の更正のうち総所得金額一八八万二八七八円、納付すべき税額四万七八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

(以下、右の各更正を総称するときは「本件各更正」といい、これと各過少申告加算税賦課決定を合わせて「本件各決定」という。)

二  被告国税不服審判所長(以下「被告審判所長」という。)が平成二年六月二七日付けでした本件各決定に対する原告の審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)を取り消す。

第二事案の概要

本件は、肩書住所地において農業を営む原告が、昭和六〇年分及び昭和六二年分(以下「本件係争年分」という。)の所得税についていわゆる白色申告書による確定申告をしたところ、被告税務署長が税務調査の上、推計によって原告の事業所得(農業所得)を算出し、本件各決定を行ったのに対し、原告が、本件税務調査は違法であり、推計の必要性も合理性もないなどと主張して、本件各決定(ただし、昭和六二年分の更正については申告額を超える部分についてのみ)の取消し及びこれらに対する原告の審査請求を棄却した本件裁決の取消しを求める事案である。

一  本件課税処分の経緯

原告の本件係争年分の各所得税の確定申告、課税処分及び不服申立ての経緯は、別表一及び二記載のとおりである。(当事者間に争いなし)

二  本件各決定の課税根拠に関する被告税務署長の主張

1  本件係争年分の総所得金額及びその算出根拠

被告税務署長が本訴において主張する原告の本件係争年分の総所得金額(農業所得金額)及びその算出根拠は、別表三記載のとおりであり、原告の本件係争年分の野菜栽培に係る面積(以下「野菜栽培面積」という。)に、後記三の3(一)(3)の方法により各年分ごとに抽出した同業者(以下「比準同業者」という。)の野菜栽培面積一アール当たりの農業所得金額(いわゆる青色申告の特典控除額控除前の野菜栽培に係る農業所得金額を野菜栽培面積で除して算定した野菜栽培面積一アール当たりの所得金額をいう。以下「一アール当たりの農業所得金額」という。)の平均値を乗じた上、これから事業専従者控除額を控除して算出したものである。

(一) 別表三の〈1〉欄

同欄記載の面積は、原告の野菜栽培面積である。

(二) 別表三の〈2〉欄

同欄記載の金額は、比準同業者の一アール当たりの農業所得金額の平均値である。

(三) 別表三の〈3〉欄

同欄記載の金額は、原告の事業専従者控除額控除前の農業所得金額であり、〈1〉の原告の野菜栽培面積に〈2〉の比準同業者の一アール当たりの農業所得金額の平均値を乗じて算出したものである。

(四) 別表三の〈4〉欄

同欄記載の金額は、原告が各年分の確定申告書に記載している事業専従者控除額である。

(五) 別表三の〈5〉欄

同欄記載の金額は、原告の農業所得金額であり、〈3〉で算出した原告の事業専従者控除額控除前の農業所得金額から〈4〉の事業専従者控除額を控除して算出したものである。

(六) 別表三の〈6〉欄

同欄記載の金額は、原告の総所得金額であり、その金額は〈5〉の農業所得金額と同額である。

2  本件各更正の適法性

本件各更正に係る原告の総所得金額は、いずれも前項記載の総所得金額の範囲内であるから、本件各更正はいずれも適法である。

3  本件各過少申告加算税賦課決定の適法性

被告税務署長は、本件各更正に伴い原告が新たに納付すべきこととなった所得税額(国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)を基礎として同法六五条一項の規定(昭和六〇年分については昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)に基づき計算した過少申告加算税をそれぞれ賦課決定したものであるから、いずれも適法である。

三  争点

1  税務調査及び更正手続の適法性

(一) 原告の主張

(1) 被告税務署長は、昭和六一年秋に原告が居住する南牧村の約三〇〇戸及びそれに隣接する川上村の全部の農家(野菜栽培を中心とする者)に対し、確定申告に係る運賃・予冷戻し金の計算方法に誤りが存在すると決めつけた上、一斉呼出調査なるものを実施し、修正申告を強制したが、既に自主申告によって確定している納税義務の範囲を納税者の不利益に変更するには必ず十分な税務調査をなさなければならない旨定めている国税通則法二四条の趣旨からすれば、税務調査ではなく、安易な行政指導によって修正申告を促すことは違法な行為である。

原告に対する本件の税務調査は、このような違法な一斉呼出には応じる必要がないとして出頭しなかった原告に対し、その報復として開始されたものであり、客観的な調査の必要性を欠いているから、質問検査権の行使について「調査について必要があるとき」との要件を定めた所得税法二三四条に違反する。

(2) 被告税務署長所部職員は、本件税務調査において、調査の理由(必要性)を何ら示さず、原告に対する二回の簡単な事情聴取だけで南牧村役場に対する反面調査を行った。また、昭和六二年分の所得税の申告についてはそもそも調査の申入れすら行わなかった。さらに、被告税務署長は、本件各更正を行うに当たり、更正通知書に何ら更正の理由を示さなかった。

右のとおり、本件税務調査及び本件各更正には、原告に対し十分な告知聴聞及び弁明の機会を与えなかった手続的違法がある。

(二) 被告税務署長の主張

(1) 被告税務署長は、原告及び昭和六〇年に死亡した原告の夫甘利正弘の確定申告書の記載内容を検討したところ、農業所得金額が同業者に比しあまりにも僅少であり、右所得金額の算出根拠となるべき収入金額と必要経費の金額が記載されていないものがあり、右所得金額が過少である疑いがあること並びに原告及び亡正弘に対する税務調査を長期間行っていなかったことから、所部職員に原告の本件係争年分に係る所得税の調査を命じたものであり、調査の必要性に欠けるところはない。

(2) 税務調査に当たって、税務職員が調査対象者に対し調査理由を開示すべき旨及び調査対象者からその取引先等の反面調査の承諾を得なければならない旨を規定した法令はなく、調査理由の開示及び取引先等の反面調査を行うか否かは権限ある税務職員の合理的裁量に委ねられ、右調査理由の開示及び取引先等の調査の告知をしなかったことは税務調査の違法をもたらすものではない。

また、被告税務署長所部職員は、昭和六三年一一月三〇日原告宅に臨場した際、原告に対し昭和六二年分の所得税についても調査の申入れをしている。

さらに、青色申告書以外の申告書に係る所得金額の更正については、更正通知書に更正の理由を付記しなければならない旨を定めた規定はなく、被告税務署長が本件各更正を行うに当たり更正通知書に更正の理由を付記していなかったとしても何ら違法ではない。

2  推計の必要性

(一) 被告税務署長の主張

被告税務署長は、原告が所部職員の調査協力要請に対し調査事項・調査対象等をまずもって被告税務署長が明示すべきであるとする一方的な態度に終始し、所部職員が原告宅に臨場した際にも、原告に係る帳簿記帳と何ら関係のない立会人らを敢えて立ち会わせた上、守秘義務を理由とする同職員の退席要求を聞き入れず、また、帳簿書類を提示しなかったことから、かかる状況にあっては原告の本件係争年分の所得金額等を実額で把握することは不可能であると判断し、やむなく所得税法一五六条の規定に基づき推計により算出して本件各更正を行ったものである。

(二) 原告の主張

原告は、野辺山開拓農業協同組合(以下「野辺山農協」という。)を通じて一切の取引を行っており、かつ、その取引の内容を明らかにする書類をすべて保管し、いつでもこれを提示できる準備をしていたのであるから、被告税務署長所部職員が原告と誠実な協議を行ってこれらの書類を検討すれば、容易に原告の実所得が判明したはずであるのに、同職員は誠実・適切な質問検査権の行使をせず、右書類の提示を求めなかったため、原告の実所得を把握できなかったのであり、推計の必要性はなかったというべきである。

3  推計の合理性

(一) 被告税務署長の主張

(1) 一般に、一定の地域内における野菜栽培農業において、栽培品目、栽培面積、立地条件等が類似する同業者にあっては、単位面積当たりの所得金額は同程度であるのが通例であるから、右同業者と類似する納税者の所得金額を、右同業者の単位面積当たりの所得金額の平均値に右納税者の野菜栽培面積を乗じて算出する方法には合理性がある。

なお、農業所得を推計する方法には、大別して、収入金額を基礎事実に計算する方法(いわゆる「収入金課税方式」)と栽培面積を基礎とする方法(いわゆる「面積課税方式」)があるとされているが、本件においては、原告が税務調査に非協力的であったことから、被告税務署長において、原告の収入金額の実額を把握することが困難であったために、右の面積課税方式を採用したものであるところ、被告税務署長が入手し又は容易に入手し得る推計の基礎事実及び統計資料は原告及び同業者の野菜栽培面積であったから、これに基づいて推計する以外に方法はなく、本件において面積課税方式を採用したのは合理的である。

(2) 原告の野菜栽培面積については、南牧村役場における昭和六〇年度の固定資産課税台帳に記載された亡甘利正弘及び昭和六二年度の同台帳に記載された原告の長男甘利弘の畑の面積四五八・一アールから、同役場産業課が野辺山農協組合長及び南牧農業協同組合の各実行組合支部長から収集した各年分の「畜産調査」と題する報告書中の「飼料作物作付面積について」の項目に記載された亡正弘の牧草地及び飼料畑の面積一八〇・〇アール(ただし、昭和六二年分については、同項目に亡正弘、原告及び弘の名が記載されていなかったので、昭和六一年分の数値によった。)を控除して算出し、また、比準同業者の各野菜栽培面積についても、右と同様の方法により算出した(ただし、被告税務署長に提出した青色申告決算書により農業用地を借入れしていることが判明した者については、同借地面積を加算した。)ものである。

要するに、原告及び比準同業者につき、その事業場所を管轄する南牧村役場から入手した公の資料を用いて、野菜栽培面積を特定・算出したものであり、基礎資料の正確性について何ら瑕疵はない。

(3) 比準同業者については、原告と同じ南牧村に住所(納税地)を有し、原告と同種の野菜栽培を主とする農業を営む個人事業者について、次の〈1〉ないし〈6〉の抽出基準(以下「本件抽出基準」といい、各別に掲記するときはその番号に従い「〈1〉の基準」というように表示する。)を設け、本件係争年分ごとに、その基準のいずれにも該当する者を抽出した。

〈1〉 野菜栽培による収入金額が農業所得に係る収入金額の五〇パーセントを超える者であること

〈2〉 税務署長から所得税について青色申告の承認を受け、確定申告の際、農業所得用の青色申告決算書を提出している者であること

〈3〉 農業に係る事業専従者数が一人あるいは零人である者であること

〈4〉 災害等により経営状態が異常であると認められる者以外の者であること

〈5〉 税務署長から更正処分を受け、これに対して不服申立てを行って係争している者でないこと

〈6〉 本件係争年分の各野菜栽培面積が一三九・一アール以上五五六・二アール未満の者であること

以上の抽出基準により、営農地域及び営農形態、規模とも考慮した上、立地条件、作付面積の近似性に十分の配慮をするとともに、青色申告者を抽出対象者とするほか、事業の継続・非継続をも抽出基準に含めるなど可能な限り正確性及び客観性に努めた。

また、比準同業者の抽出の手続は、関東信越国税局長から被告税務署長に対する通達の形式で指示し、上級官庁からの命令に基づいて一連の作業が機械的になされたものであるから、恣意的な要素の介入する余地はない。

(二) 原告の主張

(1) 被告税務署長は、同業者にあっては単位面積当たりの所得金額は同程度であるとの前提で推計を行っているが、本件の比準同業者間には一アール当たりの所得金額において最大一二・八倍もの開差があることからしても、右前提が誤りであることは明白である。

原告は、本件訴訟において、実額所得の計算に必要な手持ち資料の全部を書証として提出しており、これらの資料を元に、なお不十分と考えられる点についてだけ合理的推計を交えて計算すれば、被告税務署長の主張する数値よりも真実の所得に近似した数値が得られることは明らかであるから、被告税務署長の主張する推計方法は、相対的に見ても不合理なものである。

(2) 被告税務署長は、現地を調査し、測量を実施するなどして、原告の現実の野菜栽培面積を特定すべきであるのに、全くこれをしておらず、その結果、推計に現れた原告の「栽培面積」は実栽培面積と大きくかけ離れて、過大評価されている。

(3) 被告税務署長の抽出した比準同業者の耕作面積は、最も少ない者と最も多い者との間で約二倍も開きがあり、このような大きな開きのある中から平均を算出することは無意味である。

農業における業態としては、野菜栽培、酪農、畜産、それらの複合経営など様々な業態が存在するが、被告税務署長の抽出した比準同業者は、これら業態が混在したものであり、到底原告の業態と比較対照できるようなものではない。

野菜栽培の労働力は、家族専従者のほか、夏季アルバイトが重要であるが、被告税務署長の抽出した比準同業者は、この点においても原告との類似性が全くない。

南牧村で原告と同種の野菜栽培を主とする農業を営む個人事業者は約六〇〇戸あり、このうち昭和六〇年ころに青色申告をしていたものは一割にも満たない約四〇戸足らずであったのであから、その中から数戸だけを選定して平均を算出して推計するのは、対象があまりにも少なく、実態を反映したものではない。

右四〇戸足らずの青色申告をしている農家は、六〇〇戸の農家の中では、農業経験も豊かで売上げや所得も多いいわゆる優れた数少ない篤農家であり、このような一般的ではない農家の平均を求めることは誤りである。

原告は、昭和六〇年に夫を亡くし、当時まだ一九歳であった息子と二人で農業を営んできたものであり、南牧村の農家にあっては極めて特殊な存在であるから、被告税務署長が平均的農家の所得を基準にして原告の所得を算出することには何らの合理性も存しない。

4  本件裁決の適法性

(一) 原告の主張

被告審判所長は、次のとおり、納税者の権利救済のために中立的立場から審理を十分に尽くすべき義務に著しく違反した。

(1) 原告は、平成二年四月一二日付け申立書において、被告審判所長に対し、〈1〉申告所得税調査関係書綴り、〈2〉所得調査書等要約書、〈3〉牧草及び飼料畑の面積の分かる書類、〈4〉「同業者」の抽出基準となるものの書類などについて、国税通則法の規定に基づき、その閲覧と提出を求めた。

これら書類は本件各更正の違法性を調査するのに必要なものであるにもかかわらず、被告審判所長は、同年五月一五日付け「書類等の閲覧申請の不許可について」と題する書面で、原告の右請求をすべて拒否した。

(2) 原告は、被告審判所長に対し、〈1〉収支内訳計算書、〈2〉野辺山農協が作成した収入金額に係る回答書、〈3〉減価償却費計算表、〈4〉野辺山農協の購買品に関する明細書、〈5〉野辺山農協の総合計画預金通帳、〈6〉必要経費に係る領収書を提出した。

被告審判所長において、これら提出資料を検討すれば、容易に原告の各年分の農業所得の金額を実額計算の方法により算定することができるにもかかわらず、被告審判所長は、原告に対し一度も説明を求めず、その機会すら与えず、敢えて推計の方法による算定に固執した。

(二) 被告審判所長の主張

原告の主張は、要するに、被告審判所長が原告の審査請求について、杜撰な審査をしたために、原処分における原告の本件係争年分の所得金額についての誤った認定を容認し、これを正すことを怠ったということに尽きるのであり、これは、結局、原処分に存する違法をいうものであって、裁決固有の違反とはいえない。

第三争点に対する判断

一  争点1(税務調査及び更正手続の適法性)について

1  証拠(乙第六ないし九号証、証人篠原徳一の証言及び原告本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば、本件税務調査の経緯等について次の各事実が認められる。

(一) 原告は、被告税務署長に対し、昭和六〇年分については昭和六一年三月一三日、昭和六一年分については昭和六二年三月一三日、いわゆる白色申告書をもって所得税の確定申告をした。なお、昭和六〇年八月に死亡した原告の夫甘利正弘も同年三月一四日に昭和五九年分の所得税の確定申告書を提出していた。

これに対し、被告税務署長は、原告の昭和六一年分の確定申告書には農業所得金額が記載されているものの、その算出根拠となるべき収入金額と必要経費の金額が記載されておらず、また、収支内訳書についてはいずれの申告においても提出されていなかったこと、申告書記載の所得金額が過少ではないかとの疑いが持たれたこと、長期間にわたって調査が行われていなかったことから、昭和六二年五月、所部職員篠原徳一調査官(以下「篠原係官」という。)に原告及び亡正弘の右の三か年分に係る所得税の調査を命じた。

そこで、篠原係官は、同月二一日午後一時ころ原告宅を訪れ、所得税確定申告の内容を確認するため調査に来た旨を告げたが、原告がともに農業に携わっている長男と相談したいので後日日程を調整してから電話で連絡するなどと述べたため、やむなく原告宅を辞去した。

(二) その後、篠原係官は、原告との間で、電話により調査予定日時について数回相談した結果、同年六月一〇日午後一時ころとすることで原告の同意を得た。

右日時に篠原係官が原告宅に赴いたところ、居間に原告のほか佐久民主商工会事務局長井出節夫及び市川八十吾ら同会員四名並びに農民組合事務局長浅沼藤嗣の計六名(以下原告及び長男以外の者で臨場調査に同席を求める行動をとった者を「立会人ら」と表示することがある。)が待機していた。そこで、篠原係官は、取引先の秘密が第三者に知れるのは不都合である旨を説明し、原告に対し、立会人らを退席させるよう要請したが、原告は、税金について勉強している仲間であるからいてもらってよい旨を述べ、これに応じなかった。また、篠原係官は、原告が帳簿書類を保存しているなどと言ったことから、帳簿書類があるなら提示して調査に協力してほしてい旨を原告に要請したが、原告は、税務署の方で調査したい事項を明らかにすれば帳簿書類を提示するなどと述べ、帳簿書類を提示しなかった。そのため、篠原係官は、当日はこれ以上の調査の進展は望めないと判断し、原告宅を辞去した。

(三) その後、昭和六三年三月一一日原告から提出された昭和六二年分の所得税に係る確定申告書にも、前同様農業所得金額が記載されているものの、収入金額と必要経費の金額が記載されておらず、収支内訳書も提出されていなかったことなどから、被告税務署長は、昭和六三年一一月、篠原係官に原告の昭和六〇年分ないし昭和六二年分に係る所得税の調査を命じた。

そこで、篠原係官は、原告に電話で連絡を取り、調査予定日時について原告と相談したところ、同月三〇日の午前一〇時三〇分ころとすることで原告の同意を得た。

篠原係官は、右日時に原告宅へ赴いたところ、居間には原告のほか長男甘利弘並びに前記の井出及び市川ら六名が待機していたことから、原告に対して右の立会人らを退席させるよう求め、また、帳簿書類の提示を求めたが、原告が前回同様いずれの要請にも応じなかったため、目的が達せられないまま、原告宅を辞去した。

(四) 篠原係官は、その後も原告に対し、調査の協力を要請するため電話連絡を取り、同年一二月二三日の午後三時ころ調査のため原告宅に臨場する約束を取り付けたものの、同日午後一時三〇分ころ甘利寛幸宅に税務調査のため赴いたところ、右調査の立会いに来ていた甘利弘から、調査のため来宅しても帳簿書類の提示はしない旨の申立てがあったことから、原告には依然として帳簿書類を提示する意思がないものと判断し、当日の原告宅への往訪を中止した。

なお、原告本人尋問の結果中には、篠原係官から帳簿書類の提示を求められたことは無かった旨の供述部分があるが、原告は他方で同係官から帳簿書類の有無についての質問があったことについてはこれを認める供述をしていること、前記認定のとおり、原告と同係官との間で調査事項を先に開示すれば帳簿書類を提示する旨のやり取りがあったこと、税務調査のため臨場した税務職員が所得金額算定の基礎資料となるべき帳簿書類等の提示を求めなかったとは考え難いことからすれば、原告本人の右供述部分は不自然で採用することができない。

2  ところで、原告は、本件税務調査は、違法な一斉呼出調査に応じなかった原告に対する報復として開始され、客観的な調査の必要性を欠いた違法なものであると主張する。

しかしながら、甲第六一号証及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、被告税務署長が昭和六一年秋ころに管内の多くの農業者を対象として行政指導を実施し、申告所得金額に誤りがあると判断された者に対して修正申告を慫慂したこと及び原告がこれに応じなかったことが認められるが、このような行政指導が国税通則法二四条の趣旨により禁止されたものと解すべき根拠はなく、また、本件税務調査が右行政指導に応じなかった原告に対する報復として開始されたと認めるに足りる証拠はない。

また、前記認定のとおり、原告が被告税務署長に提出した昭和六二年分の確定申告書には農業所得金額が記載されているものの、収入金額と必要経費の金額が記載されておらず、収支内訳書については本件係争年分の確定申告においていずれも提出されていなかったのであるが、いわゆる白色申告者の場合には、青色申告者と異なり、帳簿書類の備付、記帳及び保存が法令上義務付けられておらず(所得税法一四八条一項参照)、確定申告の内容が正確であるという制度的担保がないことに照らせば、本件では客観的にみて、申告の真実性・正確性を確認するという調査の必要があったというべきである。そして、税務調査について非協力的な納税義務者に対しては税務職員が質問検査権を行使することにより調査の目的を遂げる必要があると考えられるところ、前記認定に係る本件調査の経緯に照らせば、収支内訳書が提出されておらず、昭和六二年分の申告書には収入と必要経費の金額が記載されていなかったため、申告内容の正確性を把握することができなかったことから、質問検査権を行使することによりこの点を確認する必要があったこともまた明らかである。

したがって、原告の右主張を採用することはできない。

3  次に、原告は、本件税務調査及び本件各更正には、原告に対し十分な告知聴聞及び弁明の機会を与えなかった手続的違法があると主張し、それを基礎づける具体的な違法事由として前判示第二の三の1(一)(2)掲記の諸点を指摘する。

しかしながら、まず、所得税法二三四条に基づく質問検査において、相手方の選択、質問の範囲、程度、時期、場所、調査理由の開示の可否、開示の程度等の実施の細目については、法令上特段の定めがなく、これらは質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との較量において社会通念上相当な程度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択、裁量に委ねられているのであるから、本件税務調査において、篠原係官が調査の理由及び調査対象事項を具体的に開示しなかったからといって、直ちに本件税務調査が手続的違法性を帯びるということはできない。そして、前記認定に係る諸事実に照らすと、篠原係官の原告宅への臨場調査のための働きかけ、原告の言動への対応、現場での行動及び判断には格別問題がないし、一部申告書に収入及び必要経費の金額の記載がなく、収支内訳書も提出されておらず、原告からの協力が得られない状況の下での反面調査もまた相当として是認することができる。

また、白色申告書に係る所得金額の更正については、更正通知書に更正の理由を付記すべきことを定めた法令の規定は存しないから、本件各更正の通知書に更正の理由が示されていないことを取り上げて違法と評価することはできない。

4  したがって、手続的違法をいう原告の主張はいずれも採用することができない。

二  争点2(推計の必要性について)

本件税務調査の経緯に関する前記認定事実によれば、原告は、篠原係官の臨場調査の際、調査に関係のない第三者の立会いに固執した上、帳簿類の提示要求にも応じないなど、本件税務調査に協力する姿勢が見られなかったことは明らかであるから、被告税務署長が、原告の農業所得金額を実額で把握することを断念し、右金額を推計によって算出したことは、やむを得なかったものというべきであり、本件において推計の必要性はこれを肯認することができる。

三  争点3(推計の合理性)について

1  証拠(乙第一号証、第二号証、第三号証の一、二、第四号証の一、二、第七号証、第九号証、第一〇号証の一、二、第一一号証の一、二)及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。

(一) 原告は、肩書住所地において野菜栽培を主とする農業を営む個人事業者であり、南牧村役場における昭和六〇年度の固定資産課税(補充)台帳に記載された亡甘利正弘の畑の面積及び昭和六二年度の同台帳に記載された甘利弘の畑の面積はいずれも合計すると四五八・一アール(小数点第二位以下切捨て)になり、同役場産業課が保管する昭和六〇年度及び昭和六一年度の「家畜頭羽数調」と題する冊子中の「飼料作物作付面積について」の項目に記載された亡甘利正弘の牧草地及び飼料畑の面積は各年度とも一八〇・〇アールである。また、原告の確定申告書の事業専従者欄には、昭和六〇年分では記載がなく、昭和六二年分では一名(甘利弘)が記載されている。

(二) 被告税務署長は、野菜栽培面積を基礎とするいわゆる面積課税方式により推計を行うに際し、原告の野菜栽培面積を右(一)の数値四五八・一アールから一八〇・〇アールを控除した二七八・一アールと求め、比準同業者として、原告と同じ南牧村に住所(納税地)を有し、野菜栽培を主とする農業を営む個人事業者について、本件係争年分ごとに、前判示第二の三の3(一)(3)〈1〉ないし〈6〉掲記の本件抽出基準のいずれにも該当する者をすべて抽出した。その方法は、関東信越国税局長が平成三年三月二七日付けで同被告に宛てて発した「訴訟事件に関する資料の報告について」と題する一般通達に基づき、同被告の命を受けた所部係官が資料を調査した上、所定の形式により「野菜栽培農業の同業者調査表」を作成して報告するというものであり、具体的には、右係官において、まず、〈2〉の基準に関し佐久税務署備付の所得調査カードの中から南牧村の納税者で青色申告をしている者の青色申告決算書を取り出し、次いで、この中から〈1〉及び〈3〉の基準に該当し、かつ、当該年における特殊事情の欄の記載により〈4〉の基準に該当すると認められる者を選定し、さらに、同税務署備付の事務整理簿に基づき〈5〉の基準に従って所定の者を選別し、最後に、これらの者の野菜栽培面積を原告の場合と同様の方法により算出(ただし、青色申告決算書上農業用地を借り入れている旨の記載のある者については、その借地面積を加算)した上、〈6〉の基準に該当する者のみを抽出したものである。

(三) 右の作業の結果、比準同業者として本件係争年分につきそれぞれ四名ずつが得られたが、その農業所得金額、野菜栽培面積、一アール当たりの農業所得金額及びその平均値は、別表四の各該当欄記載のとおりである。

また、原告の事業専従者控除額は、別表三の該当欄記載のとおりである。

(四) そして、原告の野菜栽培面積に比準同業者の一アール当たりの農業所得金額の平均値を乗じ、これから原告の事業専従者控除額を控除すると、原告の本件係争年分の農業所得金額は、別表三の該当欄記載のとおりとなり、右各年分の総所得金額もこれと同額となる。

2  右に認定判示した本件における推計の基礎資料の収集方法及び比準同業者の抽出過程自体は、通達に基づいて機械的に行われており、恣意の介在する余地がないから、客観的な妥当性を有するものということができる。そこで、問題は、右の推計方法の内容的な適正さということに帰着する。

3  ところで、所得税の課税標準である所得金額の認定は帳簿書類等の直接的な資料に基づいて行うことが原則であるが、納税者が帳簿書類の備付けをしない場合や納税者が税務調査に際し帳簿書類の提示を拒むなどして帳簿による調査ができない場合等において、税務署長が課税を放棄することは、正しい申告をしている誠実な納税者と比較して、租税負担の公平の見地から到底許されず、ここに推計による課税の認められる根拠がある。そして、税務署長が推計による更正処分等を行う場合においては、納税者の「財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模」(所得税法一五六条)により、合理的な方法を用いて行うべきことはいうまでもないが、右推計課税の認められる根拠に照らせば、推計の方法に要求される合理性の程度は、当該事案における具体的状況の下において税務署長が入手し又は容易に入手し得る推計の基礎事実及び統計資料等を前提とすれば、それが当該納税者の実際の所得に近似した数量を算出する上で一応最良の方法と認められる程度のものであれば足りると解するのが相当である。

これを本件についてみると、税務調査に対する納税者の協力が得られない状況の下において、課税庁の入手し又は容易に入手し得る資料としては、他の納税者の確定申告書、国定資産課税台帳等の公務所の保管資料のほか、取引先からの反面調査により入手した資料等をまず挙げることができる。このうち、取引先からの資料については、農産物の取引はおおむね野辺山農協を通じて行っている旨の原告の供述が存するけれども、収入及び支出の状況を明記し、その正確性が担保された帳簿書類やその基礎となる原始資料が提出されていない以上、これがどの程度実際の取引を反映したものか不明というほかないばかりでなく、原告は甲第五九号証掲記の雑収入の中に右農協を通さないで出荷された野菜の売上げが含まれていることを自認する旨の供述をしているのであって、これらに照らすと、本件においては、農業収入を実額で把握することはできないから、推計の方法としていわゆる収入金課税方式を採用することは相当でないというべきである。そして、正確性が担保されていて利用し得る資料としては、帳簿書類の裏付けを有する他の納税者の青色申告決算書と南牧村役場という公的機関に備え付けられた固定資産課税台帳がその主たるものであるとすれば、前記の各推計方法のうち、いわゆる面積課税方式が考慮されてしかるべきである。

そこで、右の方式を採った場合の比準同業者の抽出方法についてみるに、本件抽出基準は、それぞれ営農地域、営農形態、営農規模等の近似性や数値の正確性・正常性に配慮したものということができるから、被告税務署長の採った本件推計方法は、原告の実所得の近似値を算出するための一応最良の方法と認めることができ、合理性があるというべきである。

4  これに対し、原告は、一アール当たりの農業所得金額は本件の比準同業者間においても著しい差異があり、同業者の単位面積当たりの所得金額は同程度であるとの前提命題が成立しないから、右推計方法には合理性がない旨主張する。

なるほど、別表四によれば、比準同業者の一アール当たりの農業所得金額には、例えば昭和六〇年分で最大約一二・八倍の開きがあるなど、相当の差があるように見られないではない。しかしながら、これを子細に検討してみると、抽出された同業者のうち、平均値を下回っている者の中に二名(昭和六〇年分の番号1及び昭和六二年分の番号1)特に所得金額が少ない者が存するだけであり、そのほかには特に異常値を示している者は見当たらない。もとより、地理的条件、業態及び規模の類似性に配慮して同業者を選定しても、その余の人為的及び自然的諸条件により一部の者の間において所得にある程度の差が生じることは、農業経営の特質から避けられないことである。殊に、野菜栽培を主とする農業経営にあっては、基本的に栽培技術の優劣、品種の選定、播種・成育・収穫の時期の判断及びこれらに基づく気候の影響等の諸要因により、同一地域の類似規模の農家の間においても収穫量に差が生じ、また、投下資本及び必要経費についても多寡が存すること自体は否定できない。しかしながら、本件における同業者抽出の結果は前記のとおりであって、所得の分布にばらつきがあるというものではなく、一部に所得の特に少ない者がいるにすぎないのであるから、一般的に基本的条件の類似する同業者の単位面積当たりの所得金額は同程度であるとの命題が経験則として成立しないということはできない(問題は、右の異常値を示した同業者の取扱いであり、これらの者を除外して平均値を求めることによってより適正な標準所得が得られることになるのであるが、本件においては、右の異常値は平均値を下回る者においてのみ見られるので、これらの者を除外して算定しても平均値が高くなるだけであって、本訴の結論に影響しないから、これ以上の検討を要しない。)。

そこで、次に、比準同業者と原告との類似性について具体的に検討してみるに、原告は、〈1〉比準同業者の耕作面積は最も小さい者と最も大きい者とで約二倍の開きがある、〈2〉比準同業者は野菜栽培、酪農、畜産、これらの複合経営など様々な業態の者が混在している、〈3〉比準同業者は野菜栽培の労働力として重要な夏季アルバイトの点で原告と類似性がない、〈4〉南牧村で青色申告をしている農家は白色申告者に比べ特に収益力が高い、〈5〉原告には夫を亡くし息子と二人で農業を営んできたという特殊事情がある、などと主張して、比準同業者と原告との類似性を否定する。

しかしながら、まず右〈1〉の点に関しては、事業規模の近似性を確保するための基準としていわゆる倍半基準に基づいて比準同業者を抽出することは、本件推計方法の基礎となる野菜栽培面積についても一応の合理性があると認められるから、原告の右主張を採用することはできない。

次に、右〈2〉ないし〈5〉の点については、平均率による推計の場合、同業者間に通常存在する程度の個別的な営業条件の差異は、それが当該平均率による推計自体を全く不合理ならしめる程度に顕著なものでない限り、これを斟酌することを要しないものというべきところ、比準同業者相互間及び原告と比準同業者との間に、業態、労働力及び収益力において右程度の顕著な差異があることを推認させる証拠はなく、また、原告主張の〈5〉の事情が原告と比準同業者との間に右程度の顕著な差異を生じさせていることを認めるに資する的確な証拠もない。本件の比準同業者は、原告と同じ南牧村で農業を営む個人事業者のうち、野菜栽培を主とし(本件抽出基準〈1〉)、かつ、事業専従者数が一人又は零人の者(同〈2〉)が抽出されており、原告との類似性は確保されている。

また、原告は、原告が本訴で提出した資料を元にすれば被告税務署長の推計方法よりも更に合理的な推計が可能である旨主張するけれども、そもそも所得金額は、実額によるにせよ推計によるにせよ、収入と経費の全体について適正な資料によってその金額を把握して初めて算出することができるのであるから、その一部についてのみ資料を提出して合理性の有無を論じてみても意味がないというべきである。本件において原告は、貯金通帳や領収書等の各資料(甲第一ないし五三号証)及びこれらに基づいたとする計算結果を記した一覧表(甲第五九号証)を提出するのみで、右計算結果を得るに至った具体的な推計方法もその合理性を基礎づける具体的事実も何ら主張していないから、その正確性を検討することができない。したがって、これらに基づく推論を採用する余地はないといわなければならない。

さらに、原告は、被告税務署長の認定した原告の野菜栽培面積が実測面積と異なることや比準同業者の数が少なすぎることを主張するが、被告税務署長の認定した野菜栽培面積が実測栽培面積と異なることを示す適切な証拠はない上、前記認定のとおり、原告が税務調査に対し非協力的な態度をとっていたことに照らせば、被告税務署長が現地調査や測量を実施することは著しく困難であり、また、このような調査をしなければ推計による課税ができないとすることは、被告税務署長に対し過大な負担を強いるものであって、相当でないといわなければならない。したがって、同被告が改めて厳密な面積測定をすることなく公的機関から入手し得た資料を用いて野菜栽培面積を認定したことは相当であって、何ら推計の合理性を損なうものではない。また、比準同業者には原告との類似性が求められる以上、抽出される数がある程度制限されることはやむを得ないのであり、本件において同業者の平均的な租税負担を求めるのに必要な比準同業者数は確保されているというべきである。

以上の次第で、推計の合理性を争う原告の主張はいずれも理由がない。

四  争点4(本件裁決の適法性)について

丙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、原告の被告審判所長に対する平成二年四月一二日付け申立書による申立ての趣旨は、国税通則法九七条一項の規定に基づいて原処分庁に対し申告所得税調査関係書綴り等の書類の提出を求めるべく職権発動を促すとともに、その提出を待って審査請求人である原告に対しその書類を閲覧させるよう求めるものであったことが認められる。また、本件全証拠によっても、原告が被告審判所長に対し実額で所得金額を算出し得るような資料を提出したと認めることはできない。

そうすると、本件裁決の適法性に関する原告の主張は、要するに、被告審判所長の釈明不十分、審理不尽により、原処分における原告の本件係争年分の所得金額についての誤った認定を看過したということに尽き、これは結局、原処分の実体的な違法を理由に本件裁決の取消しを求めていることに帰着するから、行政事件訴訟法一〇条二項に照らし、原告の主張は失当である。

五  まとめ

以上のとおり、本件推計課税においては、推計の必要性及び合理性が認められ、本件各更正の総所得金額は、右推計により算出した本件係争年分の総所得金額の範囲内であるから、本件各更正には違法な点はなく、これに基づく本件各過少申告加算税賦課決定にも違法な点はない。また、前項のとおり、本件裁決にも違法な点はない。

よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 齋藤隆 裁判官 杉山愼治 裁判官 古田孝夫)

別表一

昭和六〇年分

〈省略〉

別表二

昭和六二年分

〈省略〉

別表三

〈省略〉

別表四

昭和60年分

〈省略〉

昭和62年分

〈省略〉

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